滋賀/長浜 真宗大谷派浄願寺

滋賀県長浜市のお寺
-真宗大谷派浄願寺-


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●テーマ 「いただきます」(77座)  

2007(平成19)年6月1日

表紙
食べられるため、殺されるために生まれてきたいのちはありません。
いのちはみな生きるために生まれてきたのです。
でも、いのちを奪ってしか生きることができません。
その悲しみに…私たちは「いただきます」と手を合わせるのです。
                   
真宗大谷派宗務所(東本願寺)教化冊子より
住職記
▼表紙の漫画の三コマ目のセリフ、

「自分のお金で買ったのに 言わなきゃいけないの?」

に対して、ほとんどの大人が異口同音にこの子に注意をすると思います。しかし、いのちを「食材」などと呼び、グルメにうつつを抜かす私たち大人は、四コマ目のセリフ、

「だって いのちをたべてるんだよ」

をどこまで感じ取っているでしょうか。

▼このような事実があります。

ブロイラー用の鶏の平均寿命は六十三日、それ以上はエサをやっても太らないからだという。うす暗い畳一畳ほどの、むし風呂のようなところに四十六羽の鶏がつめこまれ、人間の食料としてひたすら肥育される。そこで肥育される鶏には、もはや養鶏などという温かい言葉すら死語になってしまった。成長して、肥育場から処理場へ運ばれるとき、わずかな板戸のすきまから、はじめてみる陽光に眼をほそめるという。
 
『わが心のよくて 殺さぬにはあらず』
松本梶丸著より

▼こんな例をひとつ取っても、そのことを知らない多くの大人が、

「私は何も悪いことはしてません」

というような感覚で生きているのではないでしょうか。すなわち、それがとんでもない間違いであって、実際は、生きるということは、食べること、それは、殺し続けるということであり、親鸞聖人は、その事実を「罪悪深重」と抑えられます。

▼今、そんな私たちに対して語りかけてくる、いのちについての文章があります。これは、以前、宇野正一先生が講義の中で紹介された小学五年生の理科の授業での、ふなの解剖の感想文です。

いくら勉強のためとはいえ、今日はむごいことをしました。ふなの腹を切り開き腸や肝臓を取っても心臓はぴくぴくと動き続けていました。卵そうの中には、卵がいっぱいつまっていました。私たちは、ふなのいのちばかりか、これから産まれてくる、ふなのたくさんの赤ちゃんたちのいのちまで奪ってしまったんです。あのお母さんぶなが肝臓を取られても、腸を取られても、一生懸命生き続けようとしていたのは、きっとあのたくさんな赤ちゃんのいのちが心配だったからではないでしょうか。ごめんなさいお母さんぶな、ごめんなさい赤ちゃんぶな、いくらあやまっても、あやまっても、一度失われたいのちは帰ってこない。でも、私はやっぱりあやまらずにはいられません。(女子)

ふなの体のしくみはすばらしいと思いました。僕の体の中も、これと同じようになっているんだろうと思いました。人間と同じように胃も腸も心臓も肝臓もありました。生きているということは、不思議なことだなあと思いました。うきぶくろを取っても、卵そうを取っても、心臓はどきどきと脈を打っていました。それを見ていると胸が痛いように思いました。心臓のどきどきは今も忘れることは出来ません。かわいそうなことをしてしまいました。ふなは最後の最後まで生きようとしていました。ふなはどういう苦しい中でも生き続けていこうとしていました。そのふなのいのちを僕は今日とってしまったのです。すまないことをしてしまいました。あのふなの代わりにも僕のいのちを値打ちのあるものにしなければいけないと思います。(男子)

『いのちの重さと人間性』 宇野正一

▼この二人から、如実に教えられていることは、人として、何よりも大切である、いのちを奪うことへの

「ごめんなさい」

が、私の中にあるかどうかということ。そして、

「僕のいのちを値打ちのあるものにしなければいけない」

の如く、奪ってきたいのちから、常に私の生き方が問われているということです。

▼せめて、食事の度に、そのことを憶いつつ、

「いただきます」

と手を合わす者でありたいと思います…。
編集後記
住職記の中の「罪悪深重」については、念仏者の榎本栄一さんがこんな言葉を残されています。

「罪悪深重 私は今日まで 海の 大地の 無数の生き物を食べてきた 私の罪深さは底知れず」

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