滋賀/長浜 真宗大谷派浄願寺

滋賀県長浜市のお寺
-真宗大谷派浄願寺-


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●テーマ 想像するちから 〜浄願寺御遠忌法要から半年〜(218座)  

2022(令和4)年5月1日
 
 
表紙
▼当然ですが人間とは違い、猿がお葬式を出したという話は聞いたことがありません。
▼ところが猿人から進化したネアンデルタール人(上画像)の人骨がイラクのシャニダール洞窟で発見され、諸説はありますがネアンデルタール人には死者を思う気持ちが発達していたと考えられています。
▼それは、人骨の付近の土から雄しべのままの花粉のかたまりが検出されたこと、その人骨から離れた場所の土からは花粉が検出されなかったことなどから、死体と花が同時に埋められたと考えるのが妥当ではないかということです。つまり死者を憶い、花を供えたのです。(住職記) 
住職記
想像するちから 〜浄願寺御遠忌法要から半年〜

■霊長類研究所元所長の松沢哲郎さんのこのような研究結果があります。チンパンジーに対して、右目のないイラスト(画像↓)に自由に描いてもらいます。
↑右目の無いイラスト
↑ポポちゃんは描かれた目を塗りつぶします。
↑パンちゃんは顔の輪郭をなぞります。
↑ところがここで3歳児の人間に同じく描いてもらうとなんと、ない目を補って顔を完成させるのです。この実験から次のように話されています。

チンパンジーはいま、ここにあるものを見て、人間はいま、ここにないものを考える。人間はその時間の広がりと空間の広がりが非常に大きいのです。そして、チンパンジーは「いま、ここ」の世界を生きていますから絶望しません 。絶望する理由がないのです。「いま、ここ」の世界を生きていますから、明日のことでくよくよ思い悩むことはありません。一方、人間は想像する力がありますから簡単に絶望してしまいます。しかし、想像するちからがあるからこそ、いかに現状が悲惨であっても将来に希望を託して生きていくことができます。それが人間だと思うようになりました。
『想像するちから チンパンジーが教えてくれた人間の心』
京都大学霊長類研究所教授 松沢哲郎(2014年12月4日講演)

■人間は進化を遂げたとても優秀な生き物であるという、そんな話では決してなく、いやむしろ「いま、ここ」の世界を命一杯生きているチンパンジーにはとても及ばないのかも知れません。
■その上で、たとえそれが人間の希望、あるいは絶望であっても、ここで大切に頂きたいのは人間にだけある「想像するちから」です。昔、人間とチンパンジーは500〜600万年前に分岐し、そして20万年後、ネアンデルタール人こそ埋葬を行った最初の人類であり(表紙)、亡き人を偲び、追悼する心は人間にだけある「想像するちから」です。
■生命は必ず死に帰し、その人はもういません。肉体はここにないのです。でも人間は「いま、ここ」にないものを考えるのです。ここにない目を描く人間だからこそ、今もその人のことを思い浮かべ、心を寄せるのではないでしょうか。「想像するちから」によって、いつでも亡き人と共に生きる世界が「いま、ここ」にひらかれてくるのです。それはネアンデルタール人から続く、人類20万年のいのりです。
追記
▼「想像するちから」からやはり、半年前の「浄願寺宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌法要」が目に浮かんで来ます。当日、お勤めの中で住職として次のように表白(抜粋)を読み上げさせて頂きました。

今ここに在(おわしま)す方々、
またここに在(おわしま)さぬ方々、
還浄された故人、
これから生まれ来る未来の人、
ならびに十方衆生のいのち。
そのようなすべてのほとけの子とあいともに

▼実は恥ずかしながら、私は最後のごあいさつに涙してしまいました。今思えばそれは、私の個人的な喜びの高ぶりからのことよりも、浄願寺を支え、法儀相続されてきた、もうお姿のない先輩方をはじめ、ほとけの子の思いが「いま、ここ」に詰まった御遠忌だったからだと思います。
後記
▼また、人間はこの「想像するちから」によって、羨ましがったり、妬んだりします。つまり比べるのです。人間社会にある差別問題の根源がここにあります。今、人間であることの罪業性を胸に、差別に苦しむ人々の現実に思いを馳せる「想像するちから」こそ願われているのではないでしょうか。
▼最後に思うことは、先に「想像するちから」によって、亡き人と共に生きる世界がひらかれると書きましたが、でもやっぱり…私は「いま、ここ」にもうその人のお姿がないことがとても寂しいです。もう一度お会いしたいです。もっといっぱい話せばよかったと悔やまれるのです。

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