『黒の舟唄』歌 長谷川きよし
作詩 能吉利人 作曲 桜井順
男と女の間には 深くて暗い川がある
誰も渡れぬ川なれど エンヤコラ今夜も舟を出す
※Row and Row Row and Row
振り返るな Row Row
お前が十七俺十九 忘れもしないこの川に
二人の星のひとかけら 流して泣いた夜もある
※繰り返し
あれから幾年漕ぎ続け 大波小波ゆれゆられ
極楽見えたこともある 地獄が見えたこともある
※繰り返し
たとえば男はあほう鳥 たとえば女は忘れ貝
真っ赤な潮が満ちるとき 失くしたものを思い出す
※繰り返し
おまえと俺との間には 深くて暗い川がある
それでもやっぱり逢いたくて エンヤコラ今夜も舟を出す
※繰り返し
▼小学生から、中学生、高校生にもなると、「ポータブル・テリトリー」といって、相手の領域には決して踏み込まないかわりに、自分の領域にも踏み込ませないというのが、お互い暗黙のルールにもなっていると聞きます。
▼すでに、何十年も前『家庭のない家族の時代』(小此木啓吾著)という書物の中で、この頃の家族形態は、あまり近づくとお互いに刺してしまうので(?)、皆が少し距離を置いて付き合う「やまあらし家族」や、また、トイレと風呂と食堂だけが共同で、それ以外は、皆が自分の部屋から出ない「ホテル家族」になっていると述べられていました。
▼今日、社会から家庭に 至るまで、それは決して 他人事ではなく、いよいよ深刻になっているように思います。それぞれが相手と距離を置き、自分の世界に閉じ込もるといった人間関係の中では、ぶつかり合ったり、批判をしたりということは、ほとんどなく、まあ、せいぜい、情報交換をしているだけといっても過言ではありません。
▼今、あらためて、私たちが聞き直すべき言葉があります。
「けんかをしてはいけません」と「仲良くしてはいけません」は同意語です(北野たけし)
▼だいたい、私たちは、出来るだけ煩わしいことは切り捨て、我が世界を守りたい…そんな願いを第一に、今日まで生きてきました。ある意味、「ポータブル・テリトリー」、「やまあらし家族」、「ホテル家族」の言葉の如く、時代とともに、その願いが叶えられてきたといえます。
▼しかし、不思議なことに、こうした願いが、満たされても、一向に満足させないものがあります。出来るだけ煩わしいことは切り捨て、我が世界を守りたい…その願いよりもなお深く、内奥から突き上げてくる願い(本願)が人間にはあります。それは、唯、「共に生きたい」、そのことに尽きるのではではないでしょうか。表紙の歌も、特に最後で、そこを歌っているように思います。
それでもやっぱり逢いたくて エンヤコラ今夜も舟を出す
それでもやっぱり逢いたくてと、その促しに舟を出す者として、人間への信頼を観ておられます。
▼ご飯の時、となり同士に座るふたりの子どもがあまりに喧嘩をするので、私はとにかく、ふたりを引き離します。これはよくあることなんですが、その度に思い出すのが、住職記にも書いた、
「けんかをしてはいけません」と「仲良くしてはいけません」は同意語です(北野たけし)
という言葉です。兄弟でも、友達とでも、けんかをしてもすぐに仲直りの、そんな確かなつながりを生きる子どもに対して、私のしていることは、やっぱり違うんだろうなあと苦笑しています…。そういえば、こんな歌がありましたよね。
♪「トムとジェリー なかよく けんかしな」♪
▼表紙の歌は、知る人ぞ知る、七一年の名曲『黒の舟歌』です。私は、サビの部分は知っていましたが、フルコーラス通して聞いたのは、桑田佳祐氏が歌うカバー曲が初めてでした。以来、単なる男女間のラブソングにとどまらないこの歌に、特別な思いを抱きつつ、カラオケでもよく歌います。よろしければ、リクエストしてください。喜んで歌いますので…。(笑)