テーマ 儀式が問われている(228座)

2023(令和5)年3月1日


表紙

わたしたちはいつの間にか、
多数を正義としてひとりを見失ってしまいました。
真宗人に問われているのは、
同時代に生きている「ひとりのこころの苦悩」に、
わがこととして応えるのかという問いかけなのです。
この時代を暴力の時代と感じるのなら、
暴力に苦悩するひとりの人に
身を添わせてその声を
聞かなければなりません。
苦悩するひとりの人のこころに身を添わせ、
その苦悩を聞く者であることが
生きるということです。
あなたが身を添わせる人の苦悩は、
あなた自身の苦悩と重なり、
生きることは、共なる苦悩を生きることとなります。
『悲しみに身を添わせて』祖父江文宏著より

儀式が問われている 住職記

■東本願寺機関紙『真宗』の解放の教学ー「是旃陀羅」問題に聞くーのページ(46〜47頁)にこのような見解が掲載されました。

まず儀式という点から考えると、経典など聖典の言葉は、そのままいただくものであって、読む、読まないというような議論は基本的に成り立たないように思う。

■最後に「思う。」と表現されているので、これは個人の意見であるかもしれませんが、「本廟部出仕・儀式指導研究所研究員」という立場からこのページに記載されることはやはり問題であり、これまでの東本願寺の取り組みも否定することになります。
■まずこのページの巻頭には

2022年3月、全国水平社が創立し100年を迎えました。『観無量寿経』(以下、『観経』)に説かれる「是旃陀羅」は、創立当初から、部落差別に苦悩する人々よリ問われています。その人々の多くは、真宗の教えを大切にしてこられたご門徒でした。本ページでは、ご門徒からの切実な問いかけに対して、教学・教化に携わる方々にこの問題に対する思いを吐露していただき、共々に学びを深める機縁にしたいと思います。

とあり、私はこの文章には共感していますが、今回の見解は、「部落差別に苦悩する」「ご門徒からの切実な問いかけに対して」とはあまりにもかけ離れてあり、正直怒りと悲しみを強く感じています。
■またこの見解の中の「経典など聖典の言葉は、そのままいただくもの」とありますが、そうなると「部落差別に苦悩する人々」の現実を何の痛みもなく、それこそ「そのままいただく」ことになります。
■さらにそのような絶対的な儀式であるならばそ れはもう暴力と言わざるを得ません。
■すでに表紙の祖父江文宏さんは「真宗人」として、「暴力」と「苦悩」については、「暴力に苦悩するひとりの人に身を添わせてその声を聞かなければなりません。」と教えてくださいます。
■そもそも儀式よりも苦悩するひとりの人が断じて重いのです。
■本来、経典読誦というのは、お経そのものが対機であるように、一方通行ではなく対話なのです。だから蓮如上人は私たちに次のように教えられます。

せめて、一巻の経をも、日に一度、皆々寄り合いて、よみ申せ
『蓮如上人御一代記聞書』真宗聖典902頁

■やはり大切にされたのは「寄り合い」という皆々お互いの顔が見える対話です。
■現在の真宗大谷派をはじめ、仏教界の頭を下げるその上を通り過ぎていくような経典読誦の儀式ではどうしても権威的なものになります。そうなれば当然「是旃陀羅」問題も「読む、読まないというような議論」の入る余地はありません。「多数を正義」とし、一向に問うことのない僧侶が問題なのです。釋尊が仏教界のこのような形の経典読誦を願われているのでしょうか、いえそんなはずはありません。
■今、そのことと現在の法事の在り方も全部踏まえた上で、「真宗人」として、蓮如上人が願われたように「寄り合いて」また談合させてください。

編集後記

▼今回の『真宗』のページを読み、すぐ東本願寺に異を唱える電話をしました。そして儀式に対する一面の思いをここに書かせて頂きました。「是旃陀羅」問題と繋がるにもかかわらず、私たちは対話無き儀式を根本的に問うことを忘れているのです。だからすでに真宗大谷派の若い僧侶の声明儀式離れは、鋭い感覚でその違和感を感じ取っているのかも知れません。
▼いよいよ、宗祖親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要が勤まります(表紙参照)。また、その期間、桂小春団治さんの慶讃寄席が開催されます。またそれに先だって同朋新聞(1月号)にはこのように話されていました。

落語では、目の前にいるお客の反応を見ながら演じることを大切にしていますが、お坊さんはどうですか

▼読誦から法話までも、すっかり対話を忘れて一方通行に陥るお坊さんにさりげなく、そして厳しくも問いかけてくださる素敵な方です。ぜひご縁を。※下クリック

▼2月6日午前4時17分(日本時間同10時17分)のトルコ大地震で被害に遭われた人々に心よりお見舞いを申し上げます。日本でも関東大震災から100年、また3月11日午後2時46分、東日本大震災から12年、仏事では節目の当時亡くなられた人々の十三回忌法要を迎えます。今年もまた「忘れない。あの日から、そしてこれからも。」とすべてのいのちに憶念させて頂きます。合掌

慶讃寄席(真宗落語)の申込み


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