建売り住宅やマンションを購入したときに、お仏壇の安置場所に困惑する人は少なくありません。住宅公団が新しいタイプの高層住宅を世に問うて四半世紀。これをモデルにした和洋折中の間取りが現代住宅の基本設計になった感があり、やがて個室時代につき進んでいきます。こうした動向の中で、スタート時点から軽視されていたのが「家」の中心であるべきお仏壇の安置場所でした。昔は、家を新築するとき、お仏壇の位置を決めるところから図面を引いてかかりました。まず、仏間です。それがいま逆になっているのです。そうした困惑につけ込んで、とんでもない奇説が取りざたされたりし、なお事態をややこしくしているという話も聞きます。お仏壇の「方角」に対する根拠のない指示です。お仏壇の方角といえば安置する向きを思いうかべますが、極端な話になると、納入するとき、トラックの進行してくる方角にまでこだわった(もちろん真宗以外の家で)という実例があります。
ある仏壇屋さんから聞いた話ですが、お仏壇を届ける日と時間、それに先方に至るまでの道筋まできっちり指定してきたというのです。どうやら購入者は町の祈祷師にしたがっているらしく、仕方なしにそのとおりにぐるぐる回りで行くと、一方通行でトラックは行き止まざるを得なくなってしまいました。先方に電話すると、しばらく待てといい、再び祈祷師の指示で、日を改めて別の道を通っていくことになったそうです。現実にー方通行になっていることさえ見通せない祈祷師に惑わされるのですからいいかげんな話ですね、というのがその仏壇屋さんの感想の締めくくりでした。だから、安置する場所や向きにこだわることは一切ありません。お仏壇は三世にわたって十方を見わたしておられる阿弥陀如来のお館です。昔の人はわざわざ西方を拝するように仏間を設けたり、ご本山の方向に向くようにしたとも聞きますが、要は、お仏壇は家の中心ですから、一家がそろって礼拝できる場所を選ぶのが第一といえましよう。
●お仏壇の向きについて、迷信、俗信にまどわされることはありません。お参りしやすい場所なら、どの方角になってもかまいません。
↑『門徒もの知り帳』野々村智剣著より引用
▼住職から最後のひと言
本文中は「仏壇」とありますが、真宗では「仏壇」よりも「お内仏」(おないぶつ)と呼びます。