年回法要などの仏事は日ごろ疎遠になりがちな親類縁者が顔を合わせる得難い機会でしょう。むかしは、遠来の客というのはめずらしいものでしたが、最近は、東から西から参集するというのが普通になってきました。
ついでに言えば、一昔前までは、遠方という理由で仏事に参詣するのは一家の代表者ひとりというケースがほとんどでしたが、最近では、家族そろってお参りすることも結構ふえました。
まさに、亡き人を中心にした仏縁のたしかさと言えましょう。ところが、遠来の客を迎える側も、迎えられる側も、ひさしふりの対面のために、なつかしさが先に立って、肝心のテーマがおろそかになりかねません。仏事に参集したという目的意識が後回しになって、話に夢中になり、それに時間をついやしてしまって、法要がはじまる間ぎわまで台所や茶の間で親族集会が花ざかりという光景です。
心したいのはこれでは順序が逆、ということです。極論すれば、法要のために足を運んできたはずが、親族の寄り合いのついでに法要をつとめた、という形になってしまいかねません。理屈でなく、実際の問題として、なつかしい顔ぶれと「やあやあ」と言って茶の間に座り込んでしまったとき、法要にお参りするためにきたという気分は吹っ飛んでしまっているはずです。
だから、なにはおいても、まっさきにお仏壇の前でごあいさつしてください。まず静かに合掌礼拝し、「やあやあ」は、あくまでも二の次です。
このことは、お寺の法座にお参りしたときも、どうよう。法座に会わしていただくのは、あくまで聴聞が主題ですから、まず正面のご本尊にごあいさつします。先にお参りしている知り合いから声をかけられたら、軽く目礼して、合掌礼拝後にあらためてお互いのあいさつをするように心がけます。
●年回法要で親類縁者の家に参詣したとき、お寺の法座へ行ったとき、まず最初に仏さまに手を合わせ礼拝します。
↑『門徒もの知り帳』野々村智剣著より引用
▼住職から最後のひと言
本文中は「仏壇」とありますが、真宗では「仏壇」よりも「お内仏」(おないぶつ)と呼びます。
あいさつよりも合掌が先という作法は、湖北では徹底しています。帰宅の際も最後は合掌です。