▲水平社創立趣意書
1922年(大正11)年2月5日、西光万吉らによる水平社創立を訴えるために発行されたパンフレット。
■↑表紙の「よき日の為めに」「水平社創立趣意書」の文字の下には、次のように書かれています。
芽から花を出し
大空から
日輪を出す
歓喜よ
■私はこの言葉の根幹には親鸞聖人の「悲願は、」という次の御自釈があると思います。
悲願は……なお大地のごとし、三世十方一切如来出生するがゆえに。日輪の光がごとし、
『教行信証』親鸞聖人
(真宗聖典201頁〜202頁)
全国水平社創立100周年 〜起きて見ろ 夜明けだ〜
■「1922(大正11)年3月3日午後1時、 開会のベルが鳴り響く中、全国水平社が結成されました。不当な差別の現実から立ち上がられたその誕生から今年は100周年になります。ここであらためて先師の言葉を頂きたいと思います。
■繰り返しになりますが、何よりも水平社が舞台となる「橋のない川」(住井すゑ著)の主人公畑中孝二のモデルとなった木村京太郎さんの生の声です。それは真宗同和問題研究会で水平社創立に至るその原動力は何か…、という質問に対して語られた次の言葉です。
我々は、「真宗門徒」だから立ち上がったのだ。
■重ねて、解放運動に生涯を尽くされた泉惠機先生(長浜教区清休寺前住職)が書かれた文章です。『身同』第37号(東本願寺発行)
水平社は、寺の私たちがきちっとしていたら立ち上がる必要のないことだった。
■泉惠機先生の「立ち上がる必要のないことだった」とありますが、これは逆に言えば、立ち上がらなければならない必然性の悲しみであり、立ち上がらなければならない差別が 厳然とあるということです。それはまさに「水平社宣言」に表現される
「人の世の冷たさが、何(ど)んなに冷たいか」
「暖かい人間の心臓を引裂かれ」
るが如く、「よき日」(表紙参照)とは程遠い悲痛なる現実です。だからこそ木村京太郎さんは「我々は、真宗門徒だから立ち上がったのだ」と言い切られたのです。私はいつもこの言葉の後にやはり水平社宣言がつながってくるのです。「我々は」と「吾々は」が重なる特に最後です。
吾々は、心から人生の熱と光を願求禮讃するものである。
水平社は、かくして生れた。
人の世に熱あれ、人間に光あれ。
■住井すゑさんも水平社創立のこの日のことを嬉しいと悲しいの両面の中、「夜が明けた」と書かれています。
宣言はいつも手元に置いておいて暇がある時に読み返していますよ。創立大会の時、京都岡崎の公会堂に集まった人たちが水平社宣言を聞いた時に、総泣きに泣いたという気持ち、よくわかりますね。自分たちも人間であるという宣言を聞いて、やっと夜が明けたような気がしたのではないでしょうか。その時ほど嬉しいと同時に、またそれほど悲しい瞬間はなかったのではないでしょうか。
『水平社宣言を読む』住井すゑ・福田雅子著
■さらに、泉惠機先生が書かれた中に「寺の私たちがきちっとしていたら」とあります。そのことは当日、米田富さんが読み上げられた次の「水平社決議」から確かめさせて頂きます。
部落民の絶対多数を門信徒とする東西両本願寺が此際吾々の運動に対して抱蔵する赤 裸々なる意見を聴取し其の回答により機宜 の行動をとること。
■そして、水平社創立の翌日3月4日に水平社代表は東西両本願寺を糾問し、その所見の協議の結果、東西両本願寺に対して差別を拡大、再生産しているその在り方を批判し、4月10日、募材拒否を通告したのです。
■その40年後、1962(昭和37)年発足の真宗大谷派のいのちとも言われる真宗同朋会運動の背景には、すでに水平社があったのです。「真宗門徒一人もなし」に立って展開されてきた真宗同朋会運動にいたるこれらの歴史はただ親鸞聖人に帰れの叫びに他なりません。社会から差別されてきた同朋を「われら」として生きられた親鸞聖人…。その人を宗祖とする私たちは、木村京太郎さんも語られた「真宗門徒」とどこで言えるのでしょうか。
よき日の晨朝礼讚を勤行するのだ。
起きて見ろ 夜明けだ。
■これは表紙の「よき日の為めに」の結びの言葉です。全国水平社創立100周年、ひとえに私一人の夜明けがずっと待たれているのです。それは同じく表紙の親鸞聖人の言われる如来の「悲願」です。
▼この度、全国水平社創立100周年という尊いご縁を賜りました。この大切な節目に、皆さまと共に解放運動に歩んでまいりたいと宣言いたします。
▼3月11日午後2時46分、東日本大震災から11年を迎えます。今年もまた「忘れない。あの日から、そしてこれからも。」と憶念させて頂きます。
▼来月4月17日は泉惠機先生(長浜教区清休寺前住職 上山田)の一周忌を迎えます。そのことを思い、また内容的には水平社創立100周年の続きのようになると思いますが4月号に書かせて頂きます。
▼長浜教区の教区改編ですが、今度の真宗大谷派の独断専行(2021年12月6日〜2022年1月31日)に対して異議を唱えます。門徒さんにはまた報告させて頂きます。