テーマ 小森龍邦師還浄(205座)

2021(令和3)年4月1日


表紙

父・王の頻婆娑羅を幽閉し、殺害し、その王を救けようとしたことを理由に母の韋提希夫人を殺害しようとした阿闍世の物語を、『観無量寿経』は冒頭に出して、宗教の教義(論理)展開をする。「是旃陀羅」の部分の削除なり、不読なり、なんらかの手立てを、われわれは要求しているが、本願寺派は、なかなかそれに対応しようとしない。果たして、宗教者としての価値があるのだろうかと、われわれは疑っている。このことは、すでに水平社時代(一九四〇年)に当時の松本治一郎委員長など、数名の者が東西両本願寺に「善処」を要請している。回答は、「主旨に添うよう善処する」ということになっているのである。それを、あれから七十五年も経って、部落解放同盟広島県連によって、闘いを継続しなければならないということは、本願寺派の門徒として、残念至極である。われわれに対応する本願寺派とすれば、浄土三部経の一つである『観無量寿経』が、そもそも阿闍世の理不尽な父親殺しの物語から始まっており、これをいくらかでも是正したり、不読にしたりしては、『観無量寿経』の教えるところの全否定になるのではないかと、まことに短絡的な形而上学的な判断によるもののようである。彼らは、差別を根絶することよりも、あの物語(お芝居)に固執することのほうが信心の道だと思っているのである。硬直化し、化石化した伝統仏教という他はない。

「是旃陀羅」と「真俗二諦」〜親鸞思想について憶うこと〜 小森龍邦著
『経典の「旃陀羅」差別を問う』部落解放研究別冊より

住職記

小森龍邦師還浄

■2月26日、小森龍邦師(※1)が還浄されました。今、思い出されることは、1989年4月20日、5月22日の「真宗大谷派糾弾会」での質疑です。その聡明な印象と発せられる言葉はひとえに親鸞聖人に帰れの叫びでした。

■次に2012年10月17日、野洲文化ホールに於いての『滋賀同宗連結成(※2)25周年記念研修会』です。「部落差別の現状と同宗連に今後求めること」と題し、その中で真宗大谷派の同朋会運動の停滞を厳しく批判すると同時に自らの部落解放同盟の停滞をも話されました。

■そして2017年3月12日、長浜教務所 大谷会館講堂に於いての『解放運動特別指 定伝道研修』です。岡田英治(現在、部落解放同盟広島県連合会委員長)師とのお二人から「是旃陀羅」問題は仏教における最重要課題であると懇切丁寧に話されました。後日、「このことは大谷派宗門にとって、また何より親鸞聖人の教えを聞く私自身にとって最も大切な課題であると痛感した次第です。」という文面でお礼状を出させて頂きました。(全文は通信182座参照)

■最後は昨年7月24日〜25日、心待ちにしていました広島県連の現地研修です。しかしコロナウイルスのため中止になり、今となっては本当に残念でなりません。また次はありませんでした…。

■今、繰り返し、師の『観無量寿経』の「是旃陀羅」の教説部分は、被差別者にとってはやりきれないほど、心に痛みを感じるところである。『親鸞思想に魅せられて』の言葉を胸に、謹んで表紙の文章を頂きたいと思います。

※1 
(1932年7月30日〜2021年2月26日)は、日本の部落解放運動家、政治家。部落解放同盟広島県連合会委員長、同中央本部書記長、広島県府中市議会議員(3期)、衆議院議員(2期)、新社会党中央執行委員長などを歴任し、解放同盟広島県連顧問を務めた。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

※2 
長浜教区が、真宗教団連合として参画している「同和問題に取り組む滋賀県宗教教団連帯会議」(滋賀同宗連)は、1987年に同和問題を人権問題の重要な柱として捉え、人権教育及び人権啓発を推進し、人権社会の確立を目指すことを目的に結成され、本年で25年を迎えることになりました。このたび、結成25年を記念して研修会が開催されます。『長浜教区管内月報』より

▼編集後記▼

▼小森龍邦さんから実に沢山のことを教えて頂きました。今号は(掲載していませんが3月26日の月例部落差別問題学習会でも、3月28日の浄願寺同朋会でも話題に上っていました)その一部を書かせて頂きました。

▼この度、小森龍邦さんが参られた(還浄)ことを何人もの門徒さんが残念そうに話されました。またある方からは「今年の3月3日はいろんな思いを馳せての水平社宣言の朗読になりますね。」というメールを頂き、13時の浄願寺での朗読も19時の長浜教務所 大谷会館での朗読(下写真)もまさにそうでした…。

▼東本願寺に厳しく指摘すると同時に2015年4月18日、自らにも問いを向け水平社宣言の読み替えをされました。親鸞聖人に魅せられ、解放運動に生涯を捧げた小森龍邦さんの意思を私も継ぎたいと思います。合掌

「部落差別問題等に関する協議会 第2回企画会議」

■3月25日13:30〜「部落差別問題等に関する協議会 第2回企画会議」に出席しました。(長浜教務所 ZOOM会議)

【開催趣旨】「教学会議・諮詢事項2に対する指針(報告)」(2018年10月)において、「課題共有のための取り組みの視点」として4つの提言がなされています。その提言における「(1)全宗門的にこの課題の共有(周知)を徹底すること」について、企画会議で協議してまいりたいと考えております。特に、企画員の皆さまがご縁をもたれている教区や組、さらには寺院・教会における取り組みを念頭においていただき、皆さまの教化の現場における「是旃陀羅」の課題共有のために何が必要なのか、いかに取り組むのかなど、その方途についてご協議いただき、ご意見をいただきたく存じます。また、その取り組みを推進していくうえで、弊部や教学研究所をはじめとする宗務機関がどのように関係するのかということについてもご協議いただきまして、次年度に予定する第2回目の「部落差別問題等に関する協議会」において、具体的な提案をしていくことを主目的といたします。

●私からは、長浜教区の課題と「是旃陀羅」問題がまったく門徒さんに伝わっていない現状から、わかりやすい手引書の作成を何よりも急がねばならない等を提起しました。

部落解放研究第28回滋賀県集会

▲2月13日14:00〜(オンライン開催)滋賀県立文化産業交流会館に於いて、講師の組坂繁之氏(部落解放同盟中央執行委員長)から「全国水平社100周年に向けた部落解放運動の課題と展望」というテーマで、部落解放研究第28回滋賀県集会が開催されました。私も水平社宣言起草者、西光万吉氏の願いとその熱意を再認識しました。

長浜教区 部落差別問題協議会「全体協議会」

▲3月3日19:00〜長浜教務所 大谷会館に於いて、長浜教区 部落差別問題協議会「全体協議会」が開催されました。1922(大正11)年3月3日の全国水平社創立の産声から、この日が100回目の誕生日ということから、最初に皆で、小森龍邦師を偲びつつ、広島県連による水平社宣言を朗読しました。


2021年03月14日 浄願寺御遠忌法要実行委員会 正副委員長会議が開催されました。▼詳しく見る


2021年03月14日 永代経法要が勤まりました。▼詳しく見る


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